保育の職場の特徴として、人の入れ替わりが激しいことが挙げられます。長く勤める人は本当に長いのですが、辞めていく人はあっという間に退職してしまいます。私が見た中では1週間で退職された人もいました。それは極端な例だとしても、1年で退職する人や数年で退職する人の多さを感じます。
ではなぜ保育士はすぐに辞めてしまう人が多いのでしょうか。私なりにメカニズムを考察してみました。
保育士の退職理由は?
まずは保育士の退職理由で多いものは何か見ていきましょう。
職場の人間関係
まず多いとされるのが職場の人間関係です。私自身も非常につらい経験がありました。人間関係でつまずくという人はとても多いのです。
この人間関係の中には「職場全体の人間関係」と「(全体ではないけど)自分と、ある職員との人間関係」両方の意味を含んでいると思われます。
職場全体の人間関係が悪い保育園は、保育士の入れ替わりもかなり激しくなります。毎年(またはいつも)何人も求人募集をかけている保育園は人間関係に難ありの傾向があるとも言われています。
職場全体の雰囲気は悪くなくても、1対1あるいは1対数名の相性の悪さやいじめ、一人の傲慢な職員のせいで辞めるということも考えられます。このあたりについては後ほど詳しく書きます。
給料の安さ
給料の安さは保育に関わらない人にも有名な、一つの問題点だと言えます。私は経験上、保育士の平均年収より収入が高い時期の方が長かったのですが、それは単に恵まれていただけなんだと思います。ちなみに保育士としては高い方でも、一般社会からしたら決して高いとは言えない収入でした。
少しずつ改善されつつはありますが、まだまだ足りないですし、生活にならない収入でやっている保育士さんもいるのが現状です。生活にならなければ当然、退職して違う職を探す流れになってしまいます。
仕事量の多さ
給料の安さに対し、仕事の量が非常に多いことも保育士の退職理由に挙げられます。これは保育園そのものの体質になっている場合が多いように感じます。私自身、サービス残業や休日出勤(無給)、帰宅後自宅で仕事など、特別なこととも思わずこなしてきてしまいました。保育業界全体で仕事の量がおかしいことに気付いていない、麻痺してしまっているというところがあるのではないでしょうか。
そういう意味では、仕事の量が多くて退職するというのは「正常な感覚」を持っているとも言えるのかも知れません。
人生の節目で退職する人も
結婚や出産を機に退職するという人も多いようです。これ自体は悪いことではないようにも感じますが、見方を変えると「結婚や出産するからこの職場はもういいや」と思える程度の職場であるという面もあるでしょうし、保育園側も「産休や育休のフォローはしきれない」という事情があるとも言えるかも知れません。
現状保育士不足と言われています。人生の節目で心情的にもあっけなく退職できてしまったり、あるいは園側がフォローの努力をしなかったり、果たして本当にこのままで良いのかどうかと思います。
保育士がすぐに辞めてしまうメカニズムは?
ここまで保育士の退職理由に多いものを挙げてきました。これだけ理由が明確になっているのに、なぜなかなか保育の世界の仕組みは改善されないのでしょうか。ここからはそのメカニズムを考察していきます。
園の上層部に危機感のない人が多い
保育士さんが退職を決意した際、どのように退職理由を伝えるでしょうか。なかなか「この職場の人間関係が悪い」とか、ストレートに言う人はいないですよね。全くいないわけではありません、たまにタンカを切って辞めていく人もいますが、大体の人はオブラートに包んだり、社交辞令を使ったりして辞めていきます。
保育園などのいわゆる上司と言われる立場の人たちに、危機感がないのも原因ではないでしょうか。「うちの職場は人間関係がいい」「辞めていった人たちはそれぞれ事情があったり、合わなかったりしただけ」など、いったいどこを見ているんだよという人が多いように感じます。
こういった園の体質が前面に出ている保育園が多いのではないでしょうか。そうでなければ、給料の面はなかなか改善することは園の力だけでは難しいでしょうが、人間関係や雰囲気、業務量などもう少し改革できるはずです。
全体の雰囲気は悪くなくても、何人か人間関係を壊す職員がいる
全体の雰囲気は決して悪くないのに、毎年職員(特に入職して数年の)が辞めていってしまうという保育園は「特定の職員が人間関係を壊している」可能性もあります。
人間関係を壊す職員と関わりがなければ困らないですが、保育園の性質上一切関わらない職員というのはなかなかいません。毎年担任の組み合わせも変わることが多いので、数年すればそのような職員と組むこともあるでしょう。
担任として組んでしまうと、最低1年間は一緒です。気が合えばいいのでしょうが、人間関係を難しくする人が相手だとなかなか大変です。気持ちの弱い人であればメンタルを壊してしまう可能性もあります。
保育士の退職理由の上位にいつも人間関係が入っているのです。「自分さえ良ければ」とか「自分の思うとおりにならないから」などの理由で相手を壊していいわけがありません。
「保育士がすぐに退職してしまう」対策は?
それでは保育士がすぐに辞めてしまうことへの対策は何が考えられるでしょうか。
今いる職員を大事にする
まずは今在籍している職員を大事にするということが考えられます。今後更に保育士不足が進む可能性があります。「保育士は大変だ」「保育の仕事はブラックだ」とこれだけ一般的に言われていると、若い人の中にも保育士になるということをためらう人が増えてしまうかも知れません。
新しく入ってくる人に期待するのではなく、まずは今在籍している職員を大事にして、人間関係を良くしていくことが大事だと言えます。中には悪い言い方をすると「使えない職員」と言われてしまう人もいるかと思いますが、一方的に「使えない」と決めつける前に「育てる側にも問題はなかったか」と振り返ることも大切です。
一人ひとりが人間関係を作っているという自覚を持つ
職員一人ひとりが「職場の人間関係を作っている」という自覚を持つことも大切です。これは立場が上の人にも下の人にも言えることです。「自分だけが(自分たちだけが)良ければよい」という考えでは職場の人間関係は良くなりません。人間関係が悪ければ、今いる職員が辞めていくことにつながります。新しく入ってくる人はどんな人かわかりませんし、そもそも誰も応募してこないかも知れません。
なかなか保育士の給料を上げたり、仕事量を減らしたりということはできません。しかし人間関係は一人ひとりの心がけで「変えられる可能性がある」ものです。
まとめ
今回は「保育士はなぜすぐに辞めてしまう人が多いのか」をテーマに、私なりの考察をまとめていきました。やはり人間関係に耐えられなくなる人が多いようです。その一方で「待遇や仕事量はいち保育士の力ではどうにもできないけれど、人間関係に対する心がけは変えていける」ことも事実です。自分ひとりではどうにもなりませんが、そういう考えを持つ職員が増えてくれば保育の職場も変わっていけるかも知れません。
それでは今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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